旅行者が知っておきたい、自由と民主主義の背景にある歴史
この記事でわかること
- 戒厳令とは何だったのか?
- なぜ台湾で38年もの間、戒厳状態が続いたのか?
- 戒厳令解除後に何が変わったのか?
- 今の台湾社会とのつながりや観光時のヒント
1. そもそも「戒厳令」って何?
戒厳令(かいげんれい/中國語:戒嚴令)とは、政府が非常事態に際して軍による統治を行う状態のこと。
通常の法律よりも軍の命令が優先され、言論・出版・集会・移動の自由が厳しく制限されます。

2. 台湾における戒厳令:1949年〜1987年、世界最長の戒厳状態
台湾の戒厳令は1949年5月20日、当時の中華民国政府が中国共産党との内戦に敗れて台湾に移転した後に敷かれました。
そして驚くことに、解除されたのは1987年7月15日。その期間、実に38年間──これは世界最長の戒厳状態です。
🧨 制限された自由の例
- 政治的発言や報道に厳しい検閲
- 野党の存在が認められず、国民党の一党独裁体制
- 学校や新聞、出版物に思想チェック
- 特定の音楽や書籍の禁止
- 夜間外出の制限や、移動時の身分確認
3. なぜそこまで長く続いたのか?
理由は大きく2つ。
(1)中国との緊張状態
中国本土を支配する共産党と対立していたため、台湾政府は常に「戦時状態」を前提にしていた。
(2)国民党の権力維持
一党体制を維持するため、国民に自由な言論・選挙を与えず、政府に批判的な動きは「国家の敵」として取り締まられていた。
4. 戒厳令が解除されて何が変わったのか?
- 野党の結成が可能に(民進党など)
- 出版・報道の自由が復活
- 民主化への道が開かれ、1996年に初の総統直接選挙
- LGBT、ジェンダー、言論の自由が保障される現代台湾社会の基盤に
📍今の自由な台湾を理解するには、この「戒厳令時代をどう乗り越えたか」を知ることが重要です。
5. 台湾旅行者向け:戒厳令時代を感じる場所3選
① 白色テロ記念館(台北)
旧軍法会館をリノベーションした歴史施設。拷問室や監視カメラなど、当時の弾圧の様子がリアルに展示されています。
② 景美人権文化園区(台北市文山区)
かつての政治犯収容施設。冤罪や監視体制の再現ブースがあり、民主化の歴史を体感できます。
③ 二二八和平公園(台北駅近く)
戒厳令の前兆とも言える「二二八事件」の記念碑があり、多くの台湾人が追悼に訪れる場所です。

6. まとめ:自由な台湾には、痛みを乗り越えた歴史がある
今の台湾は、世界でもトップクラスの自由と人権が保障された社会です。
しかし、それは自然に手に入れたものではなく、戒厳令という抑圧の時代を乗り越えてきた民衆の努力の結果です。
台湾を訪れるあなたにとって、この歴史を少し知っておくだけで、街の空気・人々の優しさ・文化の多様性がより深く感じられる旅になるでしょう。
あなたは、台湾の民主化の背景についてどこまで知っていましたか?
旅先で「自由」の意味を少し立ち止まって考えてみるのも、素敵な体験になるかもしれません。