3行まとめ
- いま台湾では、米国の新しい関税に不安とイラ立ちが広がりつつも、現実的に対応しようという空気が強い。
- 2025年春の“包括関税”提案→交渉→台湾は最終20%に。さらに**半導体100%案(米国内投資に例外)**も示され、産業界は構えを固めている。
- それでも対米輸出は堅調(AI関連の前倒し発注も)。一方で“コスト増”の覚悟と、生産地・投資の再配置が加速中。

1) まず状況整理:何が起きてる?
- 2025年、米政府は多くの国を対象に追加関税を打ち出し、台湾は当初32%案→協議の末**20%に。半導体には最大100%**の輸入関税方針が示され、米国内で造る企業は優遇というメッセージが出た。
- 一方で“対中”に限れば、2024年にはEVや電池・太陽電池等の対中関税引き上げが実施済み。サプライチェーンの中国外しが米側の大きな流れになっている。
2) 台湾の街の空気:キーワードは「不合理だけど、付き合うしかない」
最新の世論調査では——
- 81.9%が「この関税は不合理」、86.4%が「台湾経済に影響あり」と回答。政権の対策を「評価」する声と「物足りない」声が拮抗するという緊張感がにじむ。
- それでも米国は中国よりは信頼できると見る人が49.2%で多数。対米の“心理的信頼”は揺れつつも維持されている。
現地の実感は「家計や仕事に響くのは困る。でも、サプライチェーンの再設計はもう始まってる。腹をくくって動くしかない」。
3) 企業の体温:前倒し発注と“投資の分散”
- 前倒し買い:半導体や電子部品では、関税前に在庫を積む動きがあり、輸出が押し上げられる局面も出た。
- 再配置:米側の“米国内で作れば優遇”という方針の下、米国投資や第三国生産へのシフトが議題の中心に。台湾企業は**「米・台・第三国」**の三拠点化でリスク分散を急ぐ。
4) 産業の“明暗”スナップショット
- プラス:対中関税で中国生産の代替として、台湾(や第三国)への発注が回るケースも。自転車・Eバイクなど一部では、中国製回避で台湾製が増えるといった現象が観測されている。
- マイナス:台湾そのものが対象になる追加関税は、価格競争力を圧迫。値上げ→需要鈍化の懸念が中下流で強い。特に中小の下請けはキャッシュと為替の管理が課題。
5) 生活者の視点:値札と雇用の“心配5カ条”
- 輸出頼みの景気感がブレやすい(受注の前倒しと反動)。
- 輸入材も絡む製品はコスト転嫁が発生。
- 為替が動くたびに家計の実感が変わる。
- 若手は「就職はAI・半導体へ」の一極化が続く。
- それでも「中国より米国」という地政学の安心感は根強い。
6) “感情”のまとめ:怒り<不安<割り切り
- 怒り:「なんで台湾まで巻き込むの?」(不合理感 81.9%)
- 不安:「うちの業界も直撃?」(影響あり 86.4%)
- 割り切り:「だったら作り方を変える」(米国内投資・第三国化・在庫運用)
この三段階を同時に抱えているのが、いまの台湾です。

7) 日本人向け・ここだけ押さえるポイント
- 台湾の対米感情は“現実主義”:感情では不満、行動は適応。
- AIブームが“緩衝材”:ハイテク需要が関税ショックを一部吸収。
- 「米で作る」「台湾で高付加価値」「第三国で量」の三本立てが合言葉。
- 対中関税は“台湾にとってプラスも”:中国製回避の代替地として選ばれる場面がある。
8) おまけ:会話で使える一言(そのままコピペ)
- 這關稅真的很麻煩。(この関税、本当にやっかいだよね)
- 大家現在都在分散產能。(今はみんな生産を分散してる)
- 看起來美國要我們多在那邊投資。(アメリカにもっと投資しろって話だね)
結論
台湾人の“アメリカ関税”への感情は、不合理だという怒りと、経済への不安、そして**「やるならやり方を変える」割り切りがミックスされた現実主義**。
数字は揺れても、動きは速い。——それが、いまの台湾の等身大です。